『ボブ・ロス 楽しいアクシデント裏切りと欲』見どころ!
■ボブ・ロスという天才を巡る骨肉の争いと恐怖。
『ボブ・ロス 楽しいアクシデント裏切りと欲』あらすじ
素晴らしい風景画を26分で描く、天才画家ボブ・ロス。自身が主演する番組『ボブの絵画教室』は大反響で、その知名度と人気は絶大なものとなりました。「絵は特別なものではない。誰でも描ける。」と話すボブは、囁くように官能的な話し方でファンを増やし人々に安らぎと幸せを与える存在。
しかし、そんなボブを『商品』として扱うビジネスパートナー、コワルスキー夫妻との間に徐々に生まれる溝。ボブの死後も続くその争いに密着する禁断のドキュメンタリー映画。
『ボブ・ロス 楽しいアクシデント裏切りと欲』感想
1965年、空軍に所属していたボブは1人目の妻ヴイッキーと結婚、息子スティーブを授かります。自然を愛し「やりがいがあることをして生きていきたい」と話すボブとヴイッキーはほどなくして離婚。その後、1977年に出会った空軍指揮官秘書ジェーンと再婚します。
ボブの友人、ダナ・ジェスターは1982年の出逢いをきっかけに急速に親睦を深め、そこで白髪の女性アネット・コワルスキーの存在を知ることになります。息子を亡くし絶望の淵にいたアネットは自身が探し求めていたものをボブの中に見つけ、共同で事業を始めるよう夫ウォルトに勧めます。
『ボブ・ロス 楽しいアクシデント裏切りと欲』は、通常のドキュメンタリー映画とは違う不穏な雰囲気の中で話が展開します。インタビューをお願いしていた10人以上の人たちは次々に出演をキャンセル。理由は皆、口を揃えて「コワルスキー夫妻からの訴訟が怖い」というもの。ビジネスパートナーであるはずのコワルスキー夫妻とボブの間にはどんな確執があったのでしょう?
経費削減のためコワルスキー宅に住み始めた頃は、ウォルトとジェーンが運営を担当し絵画関係はボブとアネット。夫婦が入れ替わったような奇妙な関係性ではありましたが、『ボブ・ロス社』としてのビジネスは大成功。しかし、その歯車が狂い始めたのはアネットがボブに好意を抱いたのがきっかけでした。
二人の肉体関係を知ったジェーンは泣き崩れますが、それでもひとまずは丸く収めようと努力します。その陰で、コワルスキー夫妻は利益のためだけの運営を推し進めます。自身が使う道具に一切の妥協を許さなかったボブは、商品を制作する際の手抜きも一切許しません。そのことについてボブとウォルトは何度も言い争いを重ねます。
「妻のジェーンはずっと支えてくれた。いつもうまくいくように見守ってくれる。」
1992年。ジェーンに癌が見つかり、そのまま帰らぬ人に…そして残酷にも、その後3週間ほどでボブにも悪性リンパ腫が見つかります。ボブのこの悪性リンパ腫について友人は、プリマ技法(ボブが用いた技法で、古くからある絵画の技法。有名なのは印象派。)では大量のシンナーを使用し、ボブは番組に出演するたびに筆を振り下ろし飛沫が体内に入ったことが原因なのではないかと推測します。
「先が短いなら、出来る限りのことをしよう。」
悪性リンパ腫が見つかったボブでしたが番組だけは継続し、ここから完全に仕事モードに突入します。51歳を迎え「人生の中で最も最高の状態にあったのではないか?本人もそれをわかっていたはずだ。」と話すスティーブ。しかし、1994年に番組は終了します。
その時一番不安だったのは、闘病中のボブではなくコワルスキー夫妻。ボブが死んだらビジネスは終わると心配していたんでしょう…ここからアネットは暴走します。
パクリ本の出版にライバル企業オリジナル商品だったアナグマの筆の独占、そして激しい痛みや衰弱していくボブに向けた『ボブ・ロス』という名前を譲渡する許可を求める書類へのサイン要求。ボブはその体に鞭を打ち、様々な手段でコワルスキー夫妻に自身の名前が譲渡されないように策を練ります。
ボブが作成したのは取消不可能信託の書類。しかし、スティーブがそれを発見した頃には時すでに遅く…その書類は叔父ジミーによって全ての知的財産を全てボブ・ロス社(コワルスキー夫妻の会社)に譲渡する書類にサインをした後でした。
コワルスキー夫妻に権利を渡さないために入籍したリンダも、このサインをしたジミーも…この件に関わる人物相手に、次々と訴訟を起こすコワルスキー夫妻。ボブの名前を使い、莫大な資金源をもつこの夫婦の圧力に関係者は恐れていました。
今でもボブ関連の商品は沢山作られ、コワルスキー夫妻は全てを支配しています。そして、今回のインタビューにコワルスキー夫妻は応えることはありませんでした。
全てが明らかにならないまま終了した『ボブ・ロス 楽しいアクシデント裏切りと欲』。真実はどこにあるのでしょう?そして、ボブ・ロスの名前を守るためならどんなことでもするであろうコワルスキー夫妻の恐怖に、現在この記事を書く私の手も震えます。
有名過ぎる天才画家の名声と、多額の金・知的財産。私達には想像できない世界の禁断のドキュメンタリーを是非お楽しみいただきたいと思います。
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