1985年、ポーランド。共産主義政権下のワルシャワで、担当している殺人事件の捜査が打ち止めに。その結果に納得がいかない若き警官は、独自に真相を探り始める。・・・公式より
【あらすじ】
ポーランド・ワルシャワの公衆トイレで起こった殺人事件。被害者は資産家のグレゴルチク、その捜査を担当したのは若き刑事ロベルトでした。グレゴルチクの部屋からはゲイポルノのビデオテープが見つかったことでゲイのコミュニティ内で行われた犯行らと思われていたこの事件は、意外な展開で操作が終了。それに不満を感じたロベルトは、単独で調査を続けることに。
【感想】
LGBTの問題と殺人事件、そして秘密警察(国家におけるスパイや反乱分子を摘発する組織)を織り交ぜた刑事映画『ヒヤシンスの血』。映画のタイトルにもなっているヒヤシンスとは、花の名前ではありませんのでご注意ください。
現代でもLGBTの問題はデリケートですが1980年代が舞台になっているこの映画では、ゲイであることやそれが世間に知れることは死活問題。そんな時代の中で起こった殺人事件の被害者グレゴルチクは資産家であり同性愛者でもありました。そんな事件を担当したのは、若手の刑事ロベルト。プライベートでは結婚や出世も決まっていたロベルトは、この事件の解決に納得がいきません。そして、独自に調査を進めて真相を暴こうとしますが…。
グレゴルチクの事件を警察上層部が「解決」とするまでは、非常に胸糞が悪い展開が多くあります。そのせいもあってかロベルトが独自に捜査を継続させるわけなのですが、その捜査を進める中でロベルトの性への考えも徐々に変化していく流れが『ヒヤシンスの血』最大の見どころです。情報を仕入れるために序盤で逮捕しなかったアレクとの出会いが全ての始まりでした。そのアレクの情報をもとに浮かび上がったバルチクという男の話から、グレゴルチクが金を渡して殺人を犯してまで隠し通したかったある写真の存在。ロベルトが導き出す真相に注目が集まります。
1985年から1987年に同性愛者を追跡して圧力をかけるために実行されたというこのヒヤシンスは、実際にポーランドで行われた作戦だったということをエンドロールで知ることができます。被害者は11,000人以上…。同性愛者であることがなぜそこまで批判され、そして生きにくい世の中だったのか?なぜ異性を好きになってはいけないのか?
私は同性愛者ではありませんが、この作品を見てLGBTについて少しだけ考える時間が増えました。作品自体はもちろん見応えのある内容で、刑事映画ならではのストーリーやスリリングなシーンも魅力的。しかし、それ以上に何か自分の世界観に刺激を与えてくれるような部分も合わせ持つ内容で、個人的には大満足の作品でした!